では今回は「三千家」の一つ、「表千家」について詳しく見ていきましょう!
三千家の中で唯一、あの徳川家との関わりもあって非常に興味深い流派です。
表千家の成立と徳川家との関わり

まずはおさらいをしますね。
前回の記事では「表千家」を創設したのは、三男:江岑宗左(こうしんそうさ)とお伝えしました。
そして、「表千家」の「表」は京都市上京区に宗家があり、表千家の象徴でもある茶室『不審庵』が通りの表にあることに由来しています。
通りの表にある事から「表千家」とお伝えしました。
初代当主の江岑宗左は、寛永19年(1642年)、茶の湯に造詣の深かった紀州藩初代藩主徳川頼宣(とくがわ よりのぶ)の招きで紀州徳川家に仕えました。
以後明治に至るまで表千家の歴代家元は紀州徳川家の茶頭として仕え、中級武士並の二百石の禄を受けていました。
また江岑は後西天皇から宸翰(しんかん:天皇自筆の文章の事)を拝領したり、東福門院より御作の香合を拝領したりと、御所や公卿らとの交流も深かったのです。
そして、紀州徳川家の歴代藩主の中には茶の湯に興味をもつ者も少なくありませんでした。
6代覚々斎の時には紀州藩4代藩主から8代将軍となった徳川吉宗からは茶碗(桑原茶碗)を拝領しました。
後の9代了々斎の時には「数寄の殿様」と呼ばれ風雅を愛した徳川治宝(とくがわ はるとみ)の庇護を受け、
治宝は利休茶道の皆伝を受けるほど茶道に通じており、了々斎の晩年には治宝を家元とし茶事を催していた。
それゆえ、治宝は幼くして了々斎の跡を継いだ10代吸江斎に了々斎から預かっていた皆伝を授ける形となりました。
現在の表千家表門は、治宝の不審庵への御成りにあたり紀州徳川家が建てたものと言われています。
また紀州で「表千家」の茶道は藩主から庶民にまで広がったので、現在も表千家の茶道が盛んなのです。
このように「表千家」は紀州徳川家から格別の待遇を受けていました。
そして現在でも、和歌山城下の和歌山市三木町堀詰橋南側には、「紀州藩表千家屋敷跡」の碑が建っており、当時の面影を残しています。
以上の事から「表千家」は「三千家」の中で唯一徳川家と関わりがあった事がわかります。
※ 余談ですが、時代が流れるにつれて数多くの茶道の流派が誕生するのですが、当主の次男や三男が独立する等して分裂する事もありました。
これに対して、流派が分裂するのを危惧した表千家の7代目当主である如心斎が、「千家を名乗るのは表千家、裏千家、武者小路千家の嫡男のみとし、他には名乗らせない」と決めたため、現在まで有名な千家は「表千家」、「裏千家」、「武者小路千家」の3つのみなのです。
表千家と三井家

皆さんは「三井家」って聞いた事ありますか?
三井家とは、今の三井住友銀行や三井住友海上など、多くの一部上場企業を持つ三井財閥の事です。
実は「表千家」と三井財閥も深い関わりがあるのです。
三井家の発祥の地が御三家紀州藩の領地であった伊勢松坂で、紀州徳川家と強いつながりを持っていました。
それまで大名など、藩主を門弟としていた表千家でしたが、経済の実権を町人が握っていた江戸中期には、三井家のような富裕層の町人を門弟として多く受け入れていました。
しかし、明治時代になると茶道は形式にのっとって行う古い時代の遺物として全く見向きもされなくなっていきます。
時代の流れと共に紀州藩の庇護もなくなり、茶道は存亡の危機にさらされることとなります。
表千家も危機的な状況に陥りますが、家元制度をとっていたこと、三井家という強力な後ろ盾があったことなどから、裏千家のような思いをせずに済みました。(※裏千家については、別記事で詳しくご説明します)
そして1906年には失火で家元の建物を全焼しましたが、5年もの歳月をかけて再建したのです。
その後、再び茶道の人口が増えだし、大正時代には八畳敷きの松風楼、昭和中期には八畳と十畳二間続きの新席が建て増しされています。
第二次世界大戦後は飛躍的に茶道人口が増加しましたが、裏千家が大部分を占め、表千家はその後をいく形となりました。
まとめ
今回は「表千家」について詳しく書きましたが、いかがでしたか?
茶道の歴史は私達の想像以上に古く、そしていくつもの困難な状況をくぐり抜けてきました。
その歴史の中には、茶道が古い時代の産物として、存続の危機に晒されていた事もありましたが、当時の家元達の尽力によって、
今日まで続く日本を代表する文化の一つとして、海外にまで知られるようになりました。
茶道を習う者としては、ただお稽古に行くだけでなく、歴史や背景について少しでも知っておくと「茶道」という文化を見直せるかもしれまんね。
歴史や背景を知ってから始めると、より一層茶道を好きになれて、どんどん興味を持つようになると思います。
興味を持てば、お稽古に励む姿勢も変わってきますし、上達も早いと思います。
他の「裏千家」「武者小路千家」については、次の記事で紹介しますので、皆さんが興味を持って茶道を始めて頂ければ嬉しいです☆
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